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『初恋』(1997)上映時間: 97分 製作国: 香港 ジャンル: ロマンス 監督: エリック・コット 製作: ウォン・カーウァイ 脚本: オーシャン・チャン/イップ・リムサム 撮影: クリストファー・ドイル 音楽: カール・ウォン 出演: 金城武/エリック・コット/カレン・モク/リー・ウェイウェイ ***************************************************** 「初恋」にまつわる物語を鮮烈なタッチで綴った一編。監督はDJ・俳優・デザイナーなど幅広い活動で知られる、ラップ・ユニット軟硬天師の一員エリック・コットで、本作が長編劇映画デビュー作。製作は本作が初のプロデュース作となるウォン・カーウァイ。撮影はクリストファー・ドイル。出演は金城武、カレン・モク、本作がデビュー作のリー・ウェイウェイほか。 (「Movie Walker」より一部抜粋。) 夢遊病の少女ウェイウェイと、彼女に付き添う夜間清掃夫ラム。いつしか彼女に好意を抱くが、全く夜の記憶が無い彼女にたえられなくなったラムは夢遊病のままの彼女とあることを決行する…。結婚式の当日に逃げ出した過去をもつ男ヤッピン。今は家族もいる彼だが、いつかかつての恋人カレンに殺されるのでは、と思っていた。そんな彼の前に10年ぶりにカレンが現れ…。夜の香港の街を舞台に、初恋にまつわる二組のカップルを描く、おとぎ話のようなラブストーリー。 (「TSUTAYA online」より。) ***************************************************** ウォン・カーウァイ製作、クリストファー・ドイル撮影、金城武出演という、まさに鉄板の組み合わせで、監督の腕次第では、『恋する惑星』『天使の涙』に匹敵する作品が出来上がる要素は十分だったのだが・・・ 俳優出身のエリック・コットが、カーウァイから打診を受けて2年かけて作ったという不要なエピソードがあまりにしつこすぎて、作品全体の雰囲気を台無しにしている。 金城武とリー・ウェイウェイ共演のパート、「夢遊病の少女と精神病の清掃員」の話が素晴らしいできだっただけに余計に残念! 不夜城の香港を舞台にしていて、香港の夜の雰囲気が十分に表現された傑作だった。リー・ウェイウェイは脚が綺麗で、しかもそのサービスショットも多く、見とれてしまった。 金城武は、相変わらず香港の夜を彷徨う男が良く似合う。 一方、もう一つのパートである「10年前に結婚が嫌で逃げた男と、逃げられた女の再会と復讐」を描いたパートはいまいちの出来。 ドイルの幻想的な映像とこのような現実的すぎる話は合っていない。 ラストは監督が出てきて、この作品を作り終えた感想を涙顔で語って終わるのだが、これがちっともよろしくない。 大体、おっさんの涙なんてラストに観たくない! これじゃあ、「天使の涙」じゃなくて「おっさんの涙」だよ! ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】 『ウンベルトD』(1951)上映時間: 87分 製作国: イタリア ジャンル: ドラマ 監督: ヴィットリオ・デ・シーカ 脚本: チェザーレ・ザヴァッティーニ 撮影: G・R・アルド 音楽: アレッサンドロ・チコニーニ 出演: カルロ・バティスティ/マリア・ピア・カジリオ/リナ・ジェナリ NY批評家協会賞(外国映画賞) ***************************************************** 家賃を滞納して部屋から追い出された年金生活者の老人ウンベルト。物乞いをしようと思い立つがプライドが許さず、ついに自殺を図ろうと愛犬を抱いて線路に立つが…。主人公はデ・シーカの父親がモデルと言われている。高齢者の貧困、年金、孤独など、現代日本にも通じる悲惨な状況が、ネオリアリスモの冷徹なタッチで描かれる。 (「シネマヴェーラ」作品解説より。) ***************************************************** 念願かなっての鑑賞で、シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞した。 恩給で生活している社会の一線を退いた老人が主人公で、生活の頼みの綱であるその恩給が、不景気にともなって減少し、老人達の生活を逼迫していくという、現代日本においては実に現実感のあるお話である。その老人は、ブチ模様をした小さな犬を飼っている。 妻も死に、孤独を癒す唯一のパートナーだ。 居を構えていた古アパートは、次第に売春宿と化していき、昔から住んでいたというのに、その老人は追い出しの圧力を受けている。 僅かな額の恩給では、アパートを出たとしても生きていくアテもない。 経済的に窮地に追い込まれた老人には、もはや生きる希望も失い、死を考えはじめる。 そこで唯一の心残りは、愛犬のブチ犬で、自分の亡き後に面倒をみてくれる場所を探したりもするが、全くアテがみつからない。 そこで、老人はブチ犬と無理心中を思いつく。犬は当然嫌がり、怖がる。 寸での所で死を免れた老人とブチ犬であったが、犬の方は飼い主に恐れをなし、かつてのようになつかなくなってしまう。 必死に、ブチ犬の興味をひこうとする老人。 最後には、ブチ犬は老人にシッポを振ってついていき、その二人(?)の後ろ姿で「FINE」の文字。 いやぁ、なんて心温まるラストシーンだろう。 犬好きにはたまらないラストだ。 いったん飼い主である老人を避けるが、今までのご恩を思い出したんだろうか、また老人になつくまでの過程を描いたラストは、名作に相応しい出来栄えである。 ヴィットリオ・デ・シーカと言えば、『自転車泥棒』と『靴みがき』辺りが代表作かもしれないが、本作こそ、デ・シーカの最高傑作に推したい。 イタリアン・ネオ・レアリズモの名手として、現実の厳しさをうったえつつ、そこに人間と飼い犬(伴侶や家族に当てはめて考えてもよい)との絆を描いてみせた本作は、バランスもよく、まさに名作に値する。 ![]() ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】 Tags:ヴィットリオ・デ・シーカ 『意志の勝利』(1935)上映時間: 110分 製作国: ドイツ ジャンル: ドキュメンタリー/戦争 監督: レニ・リーフェンシュタール 脚本: レニ・リーフェンシュタール 製作: レニ・リーフェンシュタール/アドルフ・ヒトラー 編集: レニ・リーフェンシュタール 撮影: ヴァルター・トラウト 音楽: ヘルベルト・ヴィント 出演: アドルフ・ヒトラー/ルドルフ・ヘス/ロベルト・ライ/ヨーゼフ・ゲッベルス/ヘルマン・ゲーリング/ハインリヒ・ヒムラー/フィクトール・ルッツェ/アルフレート・ローゼンベルク ヴェネチア国際映画祭(金獅子賞) パリ国際芸術博(グランプリ) ***************************************************** 1934年9月4日から1週間にわたり、ドイツ・バイエルン州の都市ニュルンベルクにおいて“意志の勝利”と題された国民社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)の全国党大会が行われた。その模様を記録したフィルムが1935年公開の長編映画『意志の勝利』。悲劇の女性監督レニ・リーフェンシュタールが手がけた本作は、その映像美、卓越した演出法など、多くのクリエイターが映像の教科書と認める、高い芸術性を誇るプロパガンダ映画。1942年日本で公開され67年ぶりに2009年リバイバル公開。ドイツでは今なお上映禁止となっている映画史上最大の問題作。 (「HMVレビュー」より。) ***************************************************** ヒトラー自らレニ監督に依頼し創らせたという、まさに歴史に残るドキュメンタリー映画。 本作の最大の見所は、やはり終幕のヒトラー演説のシーン。いつもに増してヒトラーが計算ずくのハイテンションとジェスチャーで、民衆を扇動する。 この演説シーンは、まさに圧巻で、自分がその場所にもし居たら、間違いなく洗脳されるだろう、と思わせるだけの凄みがある。 そして、この演説は、何故か聴いていて元気が出る。仕事の疲れが、何故か取れていく。 つまり、過去の映像であるにも関わらず、ヒトラーという類い稀な人物のエネルギーが、画面を通して自分に伝わってくるのだ。 自分は別にヒトラーが好きではないが、少なくとも、この演説シーンを観ている間は、そう感じた。 民衆を一つの方向へ向けて一致団結させ動かす、その演説のエネルギーたるは、時空を超える凄さであった。 これだけの才能とバイタリティを持つ人間は、おそらく長い歴史をみても少数であろう。 こういった人間は、常人を超えた才能を持つがゆえに、その目標も高く、限られた時間でその高い目標を達成するために過激な手段を選択してしまう。 つまり、ナチスでいう過激な手段とは、独裁であり、戦争であった。 超人的な能力を持つ人間こそが持つ危険性。 そして、その超人的な人間が扇動した時に、衆人が影響を受けてしまう危険性。 更には群集心理。 ![]() ナチス・ドイツという世紀の悪玉が生まれ膨張していったその様子を、このドキュメンタリーは鮮烈に捉えており、色々な意味で映画史に残る傑作ドキュメンタリーと言えるのではないだろうか。 ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】 Tags:レニ・リーフェンシュタール アドルフ・ヒトラー 『マルメロの陽光』(1992)上映時間: 139分 製作国: スペイン ジャンル: ドラマ 監督: ヴィクトル・エリセ 原案: ヴィクトル・エリセ/アントニオ・ロペス=ガルシア 脚本: ヴィクトル・エリセ 撮影: ハビエル・アギーレサロベ/アンヘル=ルイス・フェルナンデス 音楽: パスカル・ゲーニュ 出演: アントニオ・ロペス=ガルシア/マリア・ロペス/カルメン・ロペス/マリア・モレノ/エンリケ・グラン/ホセ・カルテロ/エリザ・ルイス カンヌ国際映画祭 審査員賞 カンヌ国際映画祭 国際批評家協会賞 シカゴ国際映画祭 グランプリ ***************************************************** 長篇二作目の「エル・スール」から10年の沈黙後、ようやくエリセが放った、絵画の芸術に関する透明な考察。主人公は実在の画家A・ロペスで、“マドリッド・リアリズム”と呼ばれる潮流の旗手。エリセその人にも重なる童顔の純粋な瞳をした小柄な初老の男だ。スペイン内線勃発の'36年生まれで、これもエリセ同様、一作に平気で20年かけても真実の把握を究めようとする気迫の篭った彼の絵は具象でありながら抽象を遥かに凌駕する。そのロペスがいまだ描き切れず、毎年秋になると挑戦する課題がマルメロと言う柑橘類の実。陽光を浴びて黄金色に染まるその美しさを、納得ゆく形で表現できないのだ。小さな庭に生えた木にたわわに実るマルメロの一部に的を絞り、幾度も計測し、描く位置を修正、完璧さを目指してロペスは絵筆をとるのだが……。“この小さな庭には世界のすべてがある”と'92年のカンヌでも絶賛され、審査員賞と批評家協会賞をダブル受賞した、エリセの至福の映像詩。 (「allcinema」より一部抜粋。) ***************************************************** この作品は永らく観たいと思っていたのに観ることができなかった作品で、まず鑑賞することができたことを嬉しく思う。 内容としては、ジャック・リヴェットの『美しき諍い女』を想起させるもので、画家が対象物とひたすら格闘するという、一種のドキュメンタリーである。 ただ、本作『マルメロの陽光』は、その描く対象物が言葉を発する人間ではなく、“マルメロ”という名の果実という部分において、更にストイックさが強化されているように思う。 何ヶ月もかけて、陽光の当たるマルメロを描いては消し、描いては消し、その作業を延々と繰り返す。それが140分という尺で描かれているわけで、もちろん、ストーリー展開で楽しむ映画ではない。 自然光がマルメロに当たり、その微妙な陰影を、主人公がとり付かれた様にして、無心に描いていく。一番の目的は、画を描き完成させることではなくて、その陽光に輝くマルメロと長い時間を共に過ごすことなのである。 これは、ある見方をすると、好きな事に没頭し、それで生計を立て、マルメロが枯れてしまったら、あとは寝る、みたいな、まさに天職に彩られた人生で、理想の人生と言えるだろう。 陽光に輝くマルメロを描く初老の男性を映しただけの作品だが、そこから読み取れるものは人により異なるであろうし、様々なテーマが浮かびあがってくるに違いない。監督のヴィクトル・エリセは、超がつくほどの寡作な監督として有名だが、長い時間をかけただけの深遠なるテーマを、本作から感じとることができた。 ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】 『キューポラのある街』(1962)上映時間: 100分 製作国: 日本 ジャンル: ドラマ 監督: 浦山桐郎 原作: 早船ちよ「キューポラのある街」 脚本: 今村昌平/浦山桐郎 撮影: 姫田真佐久 音楽: 黛敏郎 出演: 東野英治郎/杉山徳子/吉永小百合/市川好郎/鈴木光子/森坂秀樹/浜村純/菅井きん/浜田光夫/北林谷栄/殿山泰司/川勝喜久雄/日吉順子/下元勉/加藤武/西田隆昭/坂本勇男/岡田可愛/青木加代子/小林昭二/溝井哲夫/青木富夫/澄川透/土田義雄/会田孝久/武田晴道/谷岸典久/杉山元/河上信夫/小沢昭一/小泉郁之助/手塚央/吉行和子/高山秀雄/木下雅弘/岩城享/峰三平/東郷秀美/松川清/高槻親作/大川隆/木村潔/北出圭子 ブルーリボン賞 作品賞/主演女優賞(吉永小百合)/新人賞(浦山桐郎) 日本映画監督協会 新人賞(浦山桐郎) キネマ旬報ベストテン第2位 ***************************************************** 鋳物の町として有名な埼玉県川口市。この街にはキューポラという煙突が立ち並ぶ。昔カタギの職人の町にも時代の波が押し寄せる。旧来型の鋳物職人であるジュンの父は、働いていた工場が大工場に買収されたことからクビになってしまう。困窮に苦しむ一家だったが、ジュンはそんな境遇の中でも、自分の進路について一生懸命考え、パチンコ屋でバイトしながらも高校進学の学費を稼ごうとがんばる……。吉永小百合主演で、高度経済成長期の庶民の暮らしを温かなまなざしで描いた青春ドラマ。 (「allcinema」より。) ***************************************************** 日本映画オールタイムベストなどで常連の『キューポラのある街』、やっと観ることができた。所得倍増計画と叫びながら、日本中がこれから経済を盛り立てようと勢いづいていた時代、東京隣りの川口では、その時代の波に飲み込まれ、鋳物で生計を立てていた川口の人々は、あらゆる面での新陳代謝を余儀なくされていた。 そうした激動の昭和史を語る上で、本作はこれ以上ない作品と言えよう。 当時の、下町に住む市井の人々の暮らしを事細かに描きつつ、そこに生活する人々の希望や悩みを、実に丁寧に描いている。 主演の吉永小百合は、まだ幼さが残り、元気溌剌とした演技で、スクリーンを縦横無尽に駆け巡る。昔かたぎの職人の失業など、現実的で暗い題材を扱いながらも、こうした吉永小百合の天真爛漫たる明るさが、見事なコントラストでもって浮かび上がっていた。 希望をもたせるラストも見事で、実によくまとまった名作だとは思うが、吉永小百合が個人的に好みではないという部分と、優等生すぎる内容に関しては、やや不満を感じた。吉永小百合が主演をしている時点で、骨太な内容を求めるのは無理があるかもしれないが、もう少し見応えのある土くさい作品だったら、どうなっただろうか、と無いものねだりな興味がわいた。 ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】 『早熟 ~青い蕾(つぼみ)~』(2005)上映時間: 107分 製作国: 香港 ジャンル: ロマンス/コメディ 監督: イー・トンシン 脚本: イー・トンシン/チュン・ティンナム 撮影: キョン・クォッマン/チャン・ワイリン 音楽: ピーター・カム 出演: フィオナ・シッ/ジェイシー・チェン/エリック・ツァン/アンソニー・ウォン/キャンディ・ユー/テレサ・モウ 香港電影金像奨(香港アカデミー賞) 最優秀助演女優賞(テレサ・モウ) ***************************************************** 香港映画の巨匠、イー・トンシン監督による高校生カップルの恋を描いたラブロマンス。裕福ではないが温かい家庭で育ったカーフーと、弁護士である厳格な父の下で育ったお嬢様・ヨックナム。パーティーで知り合ったふたりは、やがて恋に落ちるのだが… (「DMM.com」より。) ***************************************************** イー・トンシン監督作品だが、この監督の作品としては、『つきせぬ想い』に並ぶ素晴らしい出来栄えのラブストーリーだった。 主演の女優は、ジョー・マ監督の『雨音にきみを想う』で大好きになったフィオナ・シッ。この『つきせぬ想い』と『雨音にきみを想う』という二つの作品は、同じ年に作られた作品だけあって、この二つの作品における彼女は、甲乙つけがたく魅力的である。 前半部分は、先が思いやられるほどの平凡なつくりだったが、終盤にかけて一気にのめりこんだ。 愛する男女の結束、生まれてくる新しい生命の尊さ、子供を思う親の気持ち、それらを温かく見守り応援してくれる仲間たち。 本作は、ラブストーリーとしてだけでなく、人間ドラマとしても秀でた作品である。 多少のツッコミどころは所々あるものの、それらを吹き飛ばすほどの内容だった。 ヒロインについてだが、主演のフィオナ・シッという女優は、日本ではほとんど知られていないのではないだろうか。日本には居そうで居ない、だけど日本人好みな感じのする、キュートな女優ということで、本作を観てなお一層ファンになった。 イー・トンシン監督のラブストーリーものと併せて、フィオナ・シッの出演作品で未見な作品は全て観てみようと思う。 ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】 『人間みな兄弟 部落差別の記録』(1960)製作国: 日本 ジャンル: ドキュメンタリー 上映時間: 60分 監督: 亀井文夫 製作: 松本酉三/大野忠/木村繁夫 原案: 杉浦明平 脚本: 杉浦明平 撮影: 菊池周 音楽: 長沢勝俊 製作会社:日本ドキュメント・フィルム、芸術映画社、松本プロダクション 提供:日本ドキュメント・フィルム ◆ブルーリボン教育文化映画賞 ◆毎日映画コンクール教育文化映画賞 ***************************************************** 月ロケットが飛ぶ宇宙時代の日本に、6000部落、300万人が理由なき差別を強いられ、苦しみのどん底にあえいでいる。この映画は、部落差別を当然と思いこんでいる人たちに反省を求め、知らない多数の国民にこの恐るべき悲しむべき事実をありのままに訴えるために製作された。スタッフ7人は、大阪、京都、奈良、和歌山、三重、長野と、1959年の8月から半年かけて撮影、結婚差別、就職差別など様々な人々の悩める声を聞き、差別の実態に迫っていく。ハンダの屑が含まれるゴミ土や灰を集めて小川で洗い出す少年、鹿子絞りをする女性、草履づくり、食肉関連事業、皮革生産者などの生活を追う。差別構造の発端は、近世封建社会において民衆を支配するために人為的、政治的に作られた身分制度。明治4年の太政官布告(解放令)で身分差別は廃止されたが、形式的なものとなり資本主義の発達と共に差別は助長されてきた。戦前の水平社運動から発展して戦後、部落解放同盟が結成され、行政闘争を行いアパートも一部建設されているが、部落解放の闘争はまだまだ続く。人権意識の高まりを背景として1965年8月、国の同和対策審議会は「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本方策」について内閣総理大臣に答申。その結果、同和対策事業特別措置法が制定され、1969年7月から施行、地区の改善が進められたが、この映画は答申前の貴重な記録となっている。 (「YIDFF 2001 公式カタログ」より。) ***************************************************** 1960年当時、全国52箇所に存在した“部落”を取り上げた貴重なドキュメンタリー・フィルム。 太くて舗装された住宅街の路地が終り、そこから先は細くて未舗装な道がある。 つまり、それが被差別部落とそれ以外との境界線である。 何たる露骨な差別だろうか。 江戸時代の「士・農・工・商・えた・ひにん」の差別制度に端を発し、高度成長の始まった昭和の時代においてもなお存在した被差別部落。彼らの住む場所は、およそ人間が住むには適さない一つ以上の条件を満たした場所であったらしい。 こういったナレーションがとても印象に残っており、白黒ドキュメンタリーを観る興奮を高めてくれた。 現代において、被差別部落の話題は、テレビで真っ向から取り上げられる機会はほとんど無い。 それだけに、こういった上映の機会は、貴重極まりないのではなかろうか。 少なくとも、こういった差別が日本人によって日本人に行われていたという事実は、厳然として認めなければならないだろう。 それにしても、当時、被差別部落の人々が、スト妨害などの反社会的な暴力運動にお金によって駆り出されていたことは、悲しむべき事実である。 お金のためとはいえ、そのような反社会的運動に参加してしまった以上、それ以降は更に社会からの風当たりも厳しく、なお一層厳しい環境に追い込まれたことは想像に難くない。 まさに負の循環であり、そこまで計算して被差別部落の人々を使った権力団体は、断罪に値する。 ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】 Tags:亀井文夫 『水のないプール』(1982)上映時間: 103分 製作国: 日本 ジャンル: ドラマ/サスペンス/エロティック 監督: 若松孝二 脚本: 内田栄一 撮影: 袴一喜 音楽: 大野克夫 出演: 内田裕也/MIE/中村れい子/藤田弓子/紗貴めぐみ/浅岡朱美/殿山泰司/安岡力也/常田富士男/赤塚不二夫/黒田征太郎/タモリ/沢田研二/原田芳雄 ***************************************************** クロロホルムを使って意識を失った若い娘を犯すという、世間を騒がせた実在の事件を基に、若松孝二監督が内田裕也主演で映画化した実録犯罪ドラマ。昼は地下鉄の駅員としてキップ切りや駅の清掃をし、夜は口やかましい女房の相手と、単調で退屈な日々を送るしがない男。男はある日、息子が昆虫の標本作りで使う注射器を見てあることを思いつく。さっそく薬局で大量のクロロホルムを購入、夜、若い女の住む部屋の窓からクロロホルムを吹き込むと予想通り女を眠らせることに成功した……。(「allcinema」より。) ***************************************************** 『十階のモスキート』『コミック雑誌なんかいらない!』に匹敵する、“ヤバイ”内田裕也の観られる貴重な邦画。 1980年代の邦画ならではのチープさがたまらない。 クロロホルムで眠らせて、連日レイプ。これが本作の主題だが、それを延々と見せる後半は、むしろマンネリを感じた。 それより良かったのが前半部分。 内田裕也は、しがない駅員で、“カチカチカチ”と鋏を鳴らしながら毎日改札で切符を切る退屈な毎日。 家に帰れば、肥えた醜い嫁さんが待っている。 だけど、その鬱積したものが突如爆発し、暴言を吐いたりして、意外に暴れん坊な内田裕也。 この退廃した日常にやられ、狂気を孕み、危うい雰囲気をプンプンさせる目つきの悪い内田裕也が、コミカルでいてとてもカッコよい。 ![]() エロ目的で観るのが本来だろうけど、エロとは直接関係のない、この前半部分に、本作ならではの魅力、そして内田裕也ならではの魅力を感じた。 ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】 『一瞬の夢』(1997)上映時間: 108分 製作国: 中国/香港 ジャンル: ドラマ 監督: ジャ・ジャンクー 製作: ジャ・ジャンクー 脚本: ジャ・ジャンクー 撮影: ユー・リクウァイ 出演: ワン・ホンウェイ/ハオ・ホンジャン/ズオ・バイタオ ◆ベルリン国際映画祭最優秀新人監督賞 ◆ベルリン国際映画祭最優秀アジア映画賞 ◆プサン国際映画祭グランプリ ◆バンクーバー国際映画祭グランプリ ◆ナント三大陸映画祭グランプリ ***************************************************** スリを生業とする青年は、孤独な日常の中で淡い恋をみつける。偶然に訪れた小さな幸福に、将来への「夢」が青年の心に芽生え始めるが残酷な「現実」が立ちはだかり・・・。27歳の長篇デビュー作。そして、一気にジャ・ジャンクーの名を世界に轟かせた衝撃作!(「シネマート六本木」作品解説より。) 70年生まれのジャ・ジャンクー監督がわずか27歳の時に北京電影学院の卒業製作として監督を務めた16mm長編劇映画。故郷の汾陽を舞台にすべて素人を俳優として起用したこの作品は、ワールド・プレミア上映となった98年のベルリン国際映画祭でヴォルフガング・シュタウテ賞(最優秀新人監督賞)を受賞したのをはじめ、プサン国際映画祭、バンクーバー国際映画祭、ナント三大陸映画祭で連続してグランプリを獲得し、国際的に大きな注目を集めた。経済政策を推し進める中国で取り残され、スリをして日々を送る主人公の姿がひたすら切ない。映像もドキュメンタリーのようで生々しい。ラストも予想がつかないほど衝撃的な場面で幕を閉じる。 (「紀伊國屋書店 Forest Plus」より。) ***************************************************** 定職を持たずスリで生計を立て、女性に対しても奥手で、それでいて言動はツッパッている。コンプレックスを抱え、人生の目標や明確な生き甲斐を見出せていない迷える若者像(外見は若者っぽくないが)が、本作の主人公ウーである。 器用に生きてきた人間には決して共感はできないだろう。 ウーは、長い目で人生をみることができていない。 それでいて、どこかで刺激を求めているし、カラオケバーで出会った女性には、一応恋心みたいなものを持ちはする。 しかし、そんなフラフラした男に、女性は魅力を感じるはずもなく、それは“一瞬の夢”と終り、失恋することになる。 自分の20代の頃の苦しみを思い出すようで、観ていると辛いが、その分、強烈に感情移入できた。 何かが満ち足りていないからこそ、女性にのめりこむが、満ち足りていないプラプラ人間だから、相手にされず、逃げられる。 それで余計にふさぎこむ・・・ このような負のスパイラル、苦悩の青春の日々に立たされているウーを、本作は淡々と冷淡に客観的にカメラに捉えているが、物語の最後も何も救済は行われず、突き放した形で、本作は幕を閉じる。作品としては救いがないが、アメリカ映画のように短絡的なハッピーエンドやバッドエンドにするよりは、数段マシである。 青春の一時期を切り取ったような作品だから、そんな短時間で結論めいたものは出なくて当然で、むしろその方が自然でリアリティがある。 ところで、カラオケバーのシーンで、室内の照明の影響で画面が赤くなる。 本作の監督ジャ・ジャンクーを、“キタノブルー”の北野武が見出したわけだが、このカラオケバーのシーンは、まさに“ジャジャンクーレッド”とでも命名したい様な映像で、北野武とジャ・ジャンクーという二人の監督の接点を見た気がした。 ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】 『キャバレー日記』(1982)上映時間: 81分 製作国: 日本 ジャンル: エロティック/コメディ 監督: 根岸吉太郎 原作: 和田平介 脚本: 荒井晴彦 撮影: 前田米造 音楽: 伊藤晴康 映倫: R-18 出演: 竹井みどり/伊藤克信/上田耕一/北見俊之/岡本広美/青山恭子/森村陽子 ***************************************************** “にっかつロマン・ポルノ”の一連作として人気を集めたポルノの名作。軍隊式に厳しい人間管理のもとで夜毎奮闘するキャバレーの人間模様を、テンポよく興味深い視点で描いている。 (「CDJournal.com」より。) ***************************************************** 日活ロマンポルノという枠組みを超えた快作!新宿歌舞伎町のキャバレーを舞台に、その悲喜こもごもを描いた作品。 当時のキャバレーって、こんなにも無法地帯だったのだろうか。 そんな興味を抱きつつ、細部に渡ってリアルな描写に興奮し、楽しんだ。 キャバレーって、今でいうキャバクラ的なイメージがあったんだけど、本作で描かれているキャバレーのサービス内容は、キャバクラとお○わりパブと○サロのサービスを全て含み、実に過激。 規制が増えすぎ、歌舞伎町浄化作戦といういらぬお節介的な政策のせいで、歌舞伎町という街が、いかに骨抜きにされ、猥雑さと面白味が無くなってしまったか。 健全な社会といえば聞こえはいいけど、古き悪き時代というものはとっても貴重であり、又、時代という流れの中で、限られた期間にのみ存在したかけがえのない黒い光であったのだ。 そして、高度成長期を頑張り抜いた、サラリーマン達の陰のエネルギー源だったのではないだろうか。 こういう、時代を強く反映した映画を観ると、清く美しい現代の社会は、実に面白味に欠けるものだと感じずにはいられない。 こうして、“東洋一の歓楽街”と謳われた新宿歌舞伎町は死んでいくのだと・・・ ![]() ★参照★ 【作品レビュー目次】 【お気に入り映画一覧】 【浅野忠信 作品リスト】
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不夜城の香港を舞台にしていて、香港の夜の雰囲気が十分に表現された傑作だった。
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恩給で生活している社会の一線を退いた老人が主人公で、生活の頼みの綱であるその恩給が、不景気にともなって減少し、老人達の生活を逼迫していくという、現代日本においては実に現実感のあるお話である。
そこで、老人はブチ犬と無理心中を思いつく。
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本作の最大の見所は、やはり終幕のヒトラー演説のシーン。
そして、この演説は、何故か聴いていて元気が出る。
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何ヶ月もかけて、陽光の当たるマルメロを描いては消し、描いては消し、その作業を延々と繰り返す。
自然光がマルメロに当たり、その微妙な陰影を、主人公がとり付かれた様にして、無心に描いていく。
陽光に輝くマルメロを描く初老の男性を映しただけの作品だが、そこから読み取れるものは人により異なるであろうし、様々なテーマが浮かびあがってくるに違いない。
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日本映画オールタイムベストなどで常連の『キューポラのある街』、やっと観ることができた。
主演の吉永小百合は、まだ幼さが残り、元気溌剌とした演技で、スクリーンを縦横無尽に駆け巡る。
希望をもたせるラストも見事で、実によくまとまった名作だとは思うが、吉永小百合が個人的に好みではないという部分と、優等生すぎる内容に関しては、やや不満を感じた。
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主演の女優は、ジョー・マ監督の『雨音にきみを想う』で大好きになったフィオナ・シッ。
ヒロインについてだが、主演のフィオナ・シッという女優は、日本ではほとんど知られていないのではないだろうか。
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江戸時代の「士・農・工・商・えた・ひにん」の差別制度に端を発し、高度成長の始まった昭和の時代においてもなお存在した被差別部落。
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クロロホルムで眠らせて、連日レイプ。
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スリを生業とする青年は、孤独な日常の中で淡い恋をみつける。偶然に訪れた小さな幸福に、将来への「夢」が青年の心に芽生え始めるが残酷な「現実」が立ちはだかり・・・。27歳の長篇デビュー作。そして、一気にジャ・ジャンクーの名を世界に轟かせた衝撃作!
定職を持たずスリで生計を立て、女性に対しても奥手で、それでいて言動はツッパッている。
このような負のスパイラル、苦悩の青春の日々に立たされているウーを、本作は淡々と冷淡に客観的にカメラに捉えているが、物語の最後も何も救済は行われず、突き放した形で、本作は幕を閉じる。
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日活ロマンポルノという枠組みを超えた快作!